本記事は、YouTube動画『日本は本当にオワコンなのか?UBSの資産レポートから見えた日本人の本当の豊かさ』の内容を基に構成しています。
「日本はもう終わっている」「日本人は年々貧しくなっている」といった悲観的な意見を、ニュースやSNSで目にする機会が増えています。
実際、日本では物価上昇や円安が進み、食料品や電気代、住宅費などの負担が重くなっています。賃金の伸びが物価上昇に追いついていないと感じる人も多く、「以前より生活が苦しくなった」という実感を持つことは不自然ではありません。
しかし、スイスの大手金融グループであるUBSが発表した世界の個人資産に関するレポートを見ると、日本に対する印象は大きく変わります。
同レポートによると、日本には純資産100万ドル以上を保有する、いわゆる「ミリオネア」が約290万人存在します。100万ドルを1ドル150円で換算すると、約1億5000万円です。
しかも、日本のミリオネア人口は、アメリカ、中国に次ぐ世界第3位とされています。さらに2025年だけで、日本ではミリオネアが3万1428人増加しました。単純計算すると、1日当たり約86人ずつ増えたことになります。
加えて、資産額がちょうど真ん中に位置する日本人の純資産、つまり中央値は約2036万円とされています。これはアメリカの中央値のおよそ2倍に相当する水準です。
日本人は、自分たちが考えている以上に、世界的には多くの資産を保有している可能性があります。
では、なぜ多くの日本人は「豊かになった」という実感を持てないのでしょうか。
この記事では、UBSのレポートを基に、日本のミリオネア人口、日本人の純資産中央値、世界の資産格差、日本で富裕層が増えている背景、そして資産形成が日本社会にもたらす意味について詳しく解説します。
UBSグローバル・ウェルス・レポートとは
まず、今回の内容の土台となっているUBSのレポートについて確認しておきます。
UBSは、スイスに本社を置く世界最大級の金融グループです。銀行業務や証券業務、資産運用、富裕層向けのウェルスマネジメントなど、幅広い金融サービスを展開しています。
UBSが発表するグローバル・ウェルス・レポートは、世界の個人資産がどこで生まれ、どのように増え、誰に保有されているのかを分析する年次レポートです。
今回取り上げられたレポートでは、56の国と地域が分析対象となっており、世界の富の92%以上をカバーしているとされています。
ここで重要なのは、レポートが扱っているのは「収入」ではなく「純資産」だという点です。
年収が高い人が、そのまま資産家として数えられるわけではありません。反対に、年収がそれほど高くなくても、住宅や土地、預貯金、株式などを多く保有し、負債が少なければ、純資産は大きくなります。
純資産はどのように計算されるのか
純資産は、一般的に次のような計算で求められます。
金融資産と実物資産の合計から、住宅ローンなどの負債を差し引いた金額です。
金融資産には、現金、預金、株式、投資信託、債券などが含まれます。実物資産には、自宅、土地、投資用不動産などが含まれます。
そのため、銀行口座や証券口座に1億5000万円の現金を持っていなくても、自宅や土地、金融資産を合計した金額から負債を差し引き、純資産が100万ドルを超えていれば、UBSの統計上はミリオネアに分類されます。
この点は、今回の数字を読み解くうえで極めて重要です。
一般的に「ミリオネア」と聞くと、自由に使える現金を大量に持ち、豪邸や高級車を所有している人を想像しがちです。
しかし実際には、自宅の評価額が大きく上昇した人や、長年住宅ローンを返済してきた人、先祖代々の土地を持っている人なども含まれています。
日本は本当に「オワコン」なのか
日本経済に対しては、長期的な低成長、人口減少、少子高齢化、円安、財政問題など、多くの課題が指摘されています。
こうした問題を見ると、日本全体が衰退し、日本人の資産も減り続けているような印象を持ちやすくなります。
ところが、UBSのレポートが示す日本の資産状況は、一般的な悲観論とは異なる姿を映し出しています。
日本のミリオネアは約290万人で世界第3位
UBSのレポートによると、日本には約290万人のミリオネアが存在します。
国別のミリオネア人口では、1位がアメリカの約2363万人、2位が中国の約531万人、3位が日本の約290万人です。
アメリカは、世界最大の株式市場を持ち、巨大企業や起業家、投資家が多く存在する国です。中国も人口が非常に多く、経済成長によって多くの富裕層が誕生してきました。
その2か国に次いで日本が世界第3位に位置していることは、意外に感じる人も多いでしょう。
日本には、世界的に知られる超富裕層や巨大IT企業の創業者が、アメリカほど多いわけではありません。
それでもミリオネアの絶対数が世界有数である背景には、長年にわたって住宅や土地、預貯金、株式などを積み上げてきた人が多いことがあると考えられます。
日本は「富裕層がほとんど存在しない国」ではありません。むしろ純資産で見ると、世界有数のミリオネア大国なのです。
2025年だけで3万1428人増加
世界全体では、2025年に約100万人のミリオネアが増えたとされています。
そのうち、日本で増加した人数は3万1428人でした。
年間3万1428人という数字を365日で割ると、1日当たり約86人です。つまり、単純計算では毎日約86人ずつ、日本で新たなミリオネアが誕生したことになります。
もちろん、これは毎日誰かの銀行口座に突然1億5000万円が振り込まれたという意味ではありません。
株価や不動産価格の上昇、住宅ローン残高の減少、預貯金や投資資産の積み上げなどによって、純資産が100万ドルの基準を超えた人が増えたということです。
日本人の平均純資産は約3178万円
UBSのレポートでは、日本の成人1人当たりの平均純資産は約3178万円とされています。
世界順位では24位です。
平均値だけを見ると、より所得や資産水準が高い国も多数存在します。しかし、平均値は一部の大富豪によって大きく押し上げられるという問題があります。
例えば、9人が1000万円を持ち、1人が10億円を持っている集団では、平均資産額は非常に高くなります。しかし、その数字が一般的な人の生活実態を表しているとは限りません。
そこで重要になるのが、資産額を少ない順に並べたとき、ちょうど真ん中に位置する人の資産額を示す「中央値」です。
日本人の純資産中央値は約2036万円
日本の成人1人当たりの純資産中央値は、約2036万円とされています。
世界順位では10位です。
この数字は、日本人の資産状況を考えるうえで、平均値よりも重要な意味を持っています。
中央値は、一部の超富裕層の影響を受けにくいためです。
つまり、日本にはごく少数の大富豪だけが存在するのではなく、一定水準の純資産を持っている人が幅広く存在していることを示しています。
日本の中央値はアメリカの約2倍
動画によると、アメリカ人の純資産中央値は約1035万円、ドイツ人は約802万円です。
日本の約2036万円という中央値は、アメリカのおよそ2倍、ドイツのおよそ2.5倍に相当します。
アメリカは、日本よりも平均年収が高く、株式市場も長期的に成長してきました。そのため、アメリカ人の方が日本人よりも資産を多く持っているというイメージを抱く人もいるでしょう。
しかし、中央値で見ると、日本の方が高いという結果になっています。
その背景には、日本では住宅や土地を保有する世帯が多いこと、長期間にわたって預貯金を積み上げてきた高齢者が多いこと、アメリカと比べて資産格差が小さいことなどが関係していると考えられます。
日本の成人の51%超が純資産1500万円以上
UBSのレポートによると、日本では成人の51%強が、純資産10万ドル以上を保有しているとされています。
10万ドルを1ドル150円で換算すると、約1500万円です。
つまり、日本の成人の半数以上が、住宅や土地、預貯金、株式などから負債を差し引いた純資産で、約1500万円以上を持っていると推計されていることになります。
この数字も、日常生活の感覚とは大きく異なるかもしれません。
ただし、ここでも注意が必要です。
純資産1500万円のすべてを現金で持っているわけではありません。自宅の評価額から住宅ローンを差し引いた金額なども含まれています。
それでも、日本の多くの人が長い時間をかけて、一定の資産を蓄積してきたことは事実だと考えられます。
日本は世界的に見て資産格差が小さい
UBSのレポートでは、資産格差を示す指標としてジニ係数も掲載されています。
ジニ係数は、所得や資産の偏りを示すために使われる指標です。一般的には、数字が0に近いほど格差が小さく、1に近いほど格差が大きいことを意味します。
動画によると、日本の資産に関するジニ係数は0.53です。
格差が大きい順に並べると、56の国と地域の中で51位でした。反対に、資産格差が小さい順で見ると6番目に位置します。
日本には、世界最高峰の大富豪が非常に多いわけではありません。
その代わり、一定の資産を持つ人が社会の中央付近に広く存在しています。
これは、1本だけ巨大な木が立っている森ではなく、ある程度まで成長した木が広い範囲に並んでいる森のような状態だと説明できます。
一部の大富豪が圧倒的な資産を独占し、それ以外の大多数がほとんど何も持っていない社会とは異なります。
日本の中間層は本当に消滅したのか
近年、日本では「中間層が減っている」「普通に働いても豊かになれない」といった議論が増えています。
所得面では、非正規雇用の増加、物価上昇、社会保険料の負担増加などによって、中間層の生活が厳しくなっている側面はあります。
一方、資産という観点から見ると、日本には今も一定の資産を持つ中間層が広く存在していることがUBSのレポートから読み取れます。
真面目に働き、住宅ローンを返済し、預金や投資を続けてきた人たちの資産は、本人が意識している以上に積み上がっている可能性があります。
SNSでは「資産1億円」「資産2億円」といった投稿が目立ちます。
そうした投稿ばかりを見ていると、自分は何も築けていないように感じるかもしれません。
しかし、国際的な統計で見ると、日本人の純資産中央値は高く、資産格差も比較的小さい水準です。
すでに資産形成を続けている人は、自分の歩みを過小評価する必要はないでしょう。
日本人の純資産中央値は5年間で50%以上増加
UBSのレポートでも特に注目されるのが、日本人の純資産中央値の伸びです。
動画によると、インフレ調整後でも、日本人の純資産中央値は過去5年間で50%以上増加しました。
これは、UBSが比較した国の中で最も高い伸び率とされています。
重要なのは、平均値ではなく中央値が上昇していることです。
一部の大富豪だけが巨額の利益を得て平均値を押し上げたのではなく、資産額がちょうど真ん中に位置する人の水準も大きく上がっていることを意味します。
資産を持っていた人が値上がりの恩恵を受けた
この5年間、日本では株価や不動産価格が大きく上昇しました。
その結果、株式や投資信託を持っていた人、不動産を保有していた人、預貯金を積み上げていた人、住宅ローンを返済して負債を減らした人の純資産が押し上げられました。
資産価格が上昇したとき、その恩恵を受け取れるのは、実際に資産を持っている人です。
将来の相場を正確に予想できた人だけが豊かになったわけではありません。
ニュースを誰よりも詳しく分析できた人だけでもありません。
株式や投資信託、不動産などを実際に保有し、市場に参加し続けた人が、値上がりの恩恵を受けたのです。
新NISAをきっかけに投資を始めた人も増加
日本では2020年以降、資産形成や投資への関心が高まりました。
特に2024年に新NISAが始まってからは、投資信託の積み立てを始めた人も増えています。
毎月の積立額が小さいと、「この金額を続けて本当に意味があるのか」と不安になることがあります。
しかし、資産形成は1か月で人生を変えるものではありません。
今月の利益が少なかったとしても、今月の行動が無意味だったわけではありません。
相場が上がらない時期にも積み立てを続け、相場が怖い時期にも生活を壊さない範囲で市場に残ることが重要です。
次の大きな上昇局面が訪れたとき、自分の資産が市場の中に存在していることが、長期投資では大きな差につながります。
長期投資で重要なのは、相場を読む才能だけではありません。途中でやめず、資産を保有し続けた期間も大きな意味を持ちます。
世界の資産ピラミッドは変化し始めている
UBSのレポートでは、日本だけでなく、世界全体の資産分布についても分析されています。
2000年には、純資産1万ドル未満の人が、世界の成人のおよそ4分の3を占めていました。
1万ドルを1ドル150円で換算すると、約150万円です。
しかし2025年には、純資産150万円未満の人の割合は42.1%まで低下しました。
世界全体で見ると、最も資産の少ない層から、その1つ上の資産層へ移動した人が増えていることになります。
従来の世界の資産分布は、底辺が非常に広く、上に行くほど人数が少なくなるピラミッド型でした。
しかし、最下層の割合が縮小し、その1つ上の層が拡大していることから、今後は従来のピラミッド型とは異なる形に変化していく可能性があります。
世界では最下層から抜け出す人が増えている
世界全体では、この25年間で経済成長が進み、極端に資産の少ない層から1つ上の層へ移動した人が増えました。
これは前向きな変化です。
全世界株式やS&P500などに連動する投資信託へ投資している人にとって、世界経済の成長は重要な意味を持ちます。
企業の売上や利益が増え、各国で所得や消費が拡大すれば、長期的には株式市場の成長にもつながる可能性があります。
世界の資産層が底上げされていることは、幅広く分散投資をしている人にとっても注目すべき変化です。
世界の上位1.5%が富の48.4%を保有
一方で、世界の資産格差は依然として非常に大きい状態です。
純資産100万ドル以上を持つミリオネアは、世界の成人の1.5%にすぎません。
しかし、その上位1.5%が、世界全体の富の48.4%を保有しているとされています。
反対に、世界の成人の42.1%を占める最も資産の少ない層は、世界の富のわずか0.6%しか保有していません。
つまり、世界では最下層から1つ上の層へ移動する人が増えている一方で、上位層の資産もそれ以上の勢いで増えているのです。
底上げと格差拡大が同時に進んでいると考えられます。
給料だけでは資産価格の上昇に追いつけないことがある
働いて収入を得ることは、生活と資産形成の基本です。
しかし、経済環境によっては、給料の伸びよりも株式や不動産などの資産価格の上昇の方が速くなることがあります。
真面目に働いて預金を増やしていても、住宅価格や株価がそれ以上のペースで上昇すれば、資産を持っている人との格差が広がります。
これは、投資をしていない人にとって厳しい現実です。
投資を「すでにお金を持っている人だけが行うもの」と考え、長期間にわたって市場の外側から眺め続けることには、以前より大きな機会損失が伴う可能性があります。
もちろん、一気に資産上位層を目指す必要はありません。
まずは少額でも資産を持つ側へ移り、その資産を長い時間をかけて育てていくことが現実的です。
長期投資は、一般的な会社員や家庭が資産形成の階段を1段ずつ上るための有力な手段の1つといえます。
なぜ日本人は豊かになった実感を持てないのか
ここまで見ると、日本人の純資産は高く、中央値も上昇し、ミリオネアも増えています。
それにもかかわらず、なぜ多くの人は豊かになったと感じないのでしょうか。
その理由として、円安とインフレが挙げられます。
資産額が増えていても、生活必需品の価格や光熱費、住宅費、教育費などが上昇すれば、日常生活で使えるお金は増えません。
また、円安によって海外の商品やサービスが割高になると、日本円で持っている資産の国際的な購買力も低下します。
資産評価額が増えていても、実際の生活が楽にならなければ、豊かになった感覚を持ちにくいのは当然です。
すべての資産が同じ価値を持つわけではない
UBSはレポートの中で、「すべての資産は同じではない」という趣旨の説明をしています。
特に純資産100万ドルから500万ドル、約1億5000万円から7億5000万円の層では、自宅が最大の資産になっている人が多いとされています。
不動産価格が上昇すれば、純資産は増えます。
しかし、自宅の価格が上昇しても、毎月自由に使える現金が自動的に増えるわけではありません。
住宅を売却し、住宅ローン残高や仲介手数料、税金などを差し引いた代金を受け取るまでは、評価額の上昇は使えるお金になりません。
そのため、統計上は富裕層でも、実際の生活は一般的な会社員や年金生活者と大きく変わらないケースがあります。
首都圏の中古マンション価格上昇も影響か
動画では、UBSの説明と日本の不動産価格の動きを組み合わせた独自の解釈も紹介されています。
UBSが「日本の地価上昇によってミリオネアが増えた」と直接説明しているわけではありません。
ただし、日本では首都圏の中古マンション価格が長期にわたって上昇しており、動画によると13年間で117.3%上昇しています。
価格が2倍以上になった計算です。
10年以上前に東京近郊でマンションを購入した人は、購入当時よりも自宅の評価額が大幅に上がっている可能性があります。
自宅価格の上昇でミリオネアになる例
例えば、10年以上前に東京近郊でマンションを購入した会社員がいるとします。
現在のマンション評価額が1億4000万円、住宅ローン残高が2000万円、預金や投資信託が3000万円だった場合、純資産は次のようになります。
1億4000万円に金融資産3000万円を加え、住宅ローン2000万円を差し引くと、純資産は1億5000万円です。
本人の給料や日々の暮らしが大きく変わっていなくても、UBSの基準ではミリオネアに分類される可能性があります。
昔から土地を保有している高齢者も同様です。
土地の評価額が1億5000万円以上あり、住宅ローンなどの負債がなければ、年金中心の質素な生活を送っていても、統計上はミリオネアになります。
「家は富裕層、財布は普通」という日本人
日本のミリオネア約290万人の中には、自宅や土地の評価額によって純資産100万ドルを超えている人も多く含まれている可能性があります。
統計上は富裕層でも、自由に使える現金はそれほど多くないという状態です。
動画では、この状況を「家は富裕層、財布は普通」と表現しています。
自宅の評価額が上昇しても、食料品や電気代、保険料の支払いに使うことはできません。
その一方で、インフレによって生活費は上昇し、円安によって海外に対する購買力は低下しています。
純資産の数字が増えていても、生活が豊かになったと感じられない理由の1つは、ここにあります。
住宅ローン返済も立派な資産形成
自宅価格の上昇によって純資産が増えることを、単なる数字上の変化だと考える必要はありません。
住宅ローンを長期間返済し、負債を減らしてきたことも、立派な資産形成です。
住宅ローンを返済するたびに、自宅に対する実質的な持分は増えていきます。
さらに不動産価格が上昇すれば、純資産はより大きくなります。
投資信託や株式だけが資産形成ではありません。
住宅を購入し、長い時間をかけてローンを返済してきたことも、日本人の純資産を支えている重要な要素です。
日本人の資産の約68.9%は金融資産
日本人の資産が、すべて不動産に偏っているわけではありません。
動画によると、日本の総資産の68.9%は金融資産です。
金融資産には、預金、株式、投資信託、債券などが含まれます。
日本では預貯金を重視する傾向が長く続いてきましたが、近年はNISAの普及などによって、株式や投資信託を保有する人も増えています。
金融資産の大きな特徴は、不動産と比べて必要なときに換金しやすいことです。
必要なのは自由に動かせる資産
自宅や土地は重要な資産ですが、生活上の選択肢を広げるためには、自由に動かせる金融資産も必要です。
例えば、次のような場面では、現金や投資信託などの金融資産が役立ちます。
転職して一時的に収入が減るとき、家族との時間を優先したいとき、病気や修理などの急な出費に対応するとき、新しい仕事や事業へ挑戦するときです。
自宅の評価額が高くても、すぐに売却できなければ、目の前の生活費には使えません。
不動産という資産と、必要なときに使える金融資産の両方を持つことで、統計上の資産額が、より実感を伴う豊かさに近づいていきます。
UBSレポートから見える日本の希望
日本には、賃金、物価、人口減少、社会保障、財政など、数多くの課題があります。
しかし、資産という視点で見ると、日本は一部の大富豪だけが富を独占している国ではありません。
一定の資産を持つ中間層が幅広く存在し、資産格差も世界的には比較的小さい国です。
この分厚い中間層は、日本の暮らしやすさや社会の安定にも関係している可能性があります。
数字に表れない日本の豊かさ
資産レポートには、預貯金や株式、自宅、土地など、金額で評価できるものが記載されます。
しかし、生活の豊かさは金融資産だけで決まるものではありません。
日本では、日常生活で銃や違法薬物を身近な脅威として警戒することなく暮らせる地域が多くあります。
公共の場所を比較的きれいに使い、知らない人同士でも一定のルールを守ろうとする文化があります。
店舗に入れば挨拶が返ってきて、手の届く価格で一定品質の食事を楽しめます。
春には桜、秋には紅葉があり、海や山、温泉などの自然環境にも恵まれています。
こうした要素は銀行口座や証券口座の残高には表示されません。
それでも、安全性、清潔さ、他人に対する最低限の信頼、公共サービスへのアクセスなどは、生活の豊かさを考えるうえで重要な社会的資産です。
分厚い中間層が社会の安定を支える
日本に比較的安全で清潔な社会が残り、極端な分断がまだ少ない理由の1つとして、一定の資産を持つ中間層の存在が考えられます。
住む場所、仕事、貯蓄、家族など、自分が守りたいものを持っている人が多ければ、社会とのつながりを感じやすくなります。
自分は社会から完全に切り離されているわけではないという感覚が、公共の場所を大切にする行動や、他人への最低限の信頼につながる可能性があります。
動画では、UBSのチーフエコノミストによる、富が広く共有されているほど社会的な緊張を生みにくいという趣旨の指摘も紹介されています。
資産形成は、個人がお金持ちになるためだけの行動ではありません。
多くの家庭が少しずつ資産を保有することは、社会全体の安定や、分厚い中間層を維持することにもつながります。
投資は一部の資産家だけのものではない
普通に働く人がNISAなどを利用し、企業の株式や投資信託を保有すれば、企業が成長したときの利益を家計にも取り込める可能性があります。
企業の利益が一部の創業者や大株主だけに集中するのではなく、多くの一般家庭にも分配される仕組みが広がれば、中間層の資産形成にもつながります。
もちろん、投資だけで日本のあらゆる問題が解決するわけではありません。
賃金上昇、社会保障改革、子育て支援、教育、住宅政策など、幅広い取り組みが必要です。
それでも投資は、一般的な家庭が企業や世界経済の成長を自分の資産へ取り込むための有力な手段の1つです。
資産形成は自分と家族の選択肢を増やす
資産形成の目的は、単に口座残高を増やすことではありません。
十分な資産があれば、働き方を変えたり、家族との時間を増やしたり、新しいことへ挑戦したりする選択肢が生まれます。
急な出費や収入減少にも対応しやすくなり、将来に対する不安も軽減できます。
1人1人の資産が増えることは、自分と家族を守るだけでなく、日本の中間層を厚くすることにもつながります。
中間層が資産を持ち、将来に希望を持てる社会を維持することは、日本の安全性や暮らしやすさを次の世代へ残す力にもなるでしょう。
これから資産形成を始める人が意識したいこと
動画では、資産形成について、まだ始めていない人は小さく始め、すでに始めている人は焦らず続けることが提案されています。
余裕が出てきた場合には、生活を圧迫しない範囲で積立額を少しずつ増やしていく方法もあります。
重要なのは、今日投資する金額の大きさだけではありません。
10年後や20年後にも、自分が資産を持つ側にいることが大切です。
毎月の積立額が小さくても、長期間続ければ、元本の積み上げに加えて運用益が運用益を生む複利効果も期待できます。
一方で、投資には元本割れの可能性があります。
短期間で使う予定のお金や、生活防衛に必要な資金まで投資に回すのではなく、余裕資金で長期的に取り組むことが基本です。
SNSの富裕層と比較しすぎる必要はない
SNSでは、短期間で大きな利益を得た人や、数億円の資産を持つ人の投稿が目立ちます。
しかし、そうした投稿は社会全体の一部にすぎません。
日本の純資産中央値は約2036万円であり、一定の資産を持つ人は広く存在しています。
住宅ローンを返済しながら、少額の預金や投資を続けている人も、着実に純資産を積み上げています。
他人の資産額と比較して焦るよりも、自分の収入、支出、家族構成、年齢、目標に合った資産形成を続けることが重要です。
資産形成は他人との競争ではありません。
自分と家族が将来選べる道を増やすための取り組みです。
日本は「終わった国」と言い切れる状況ではない
日本には多くの問題があります。
円安、物価上昇、人口減少、社会保障負担などについて、楽観視はできません。
一方で、UBSのレポートが示すように、日本には約290万人のミリオネアが存在し、その人数は世界第3位です。
日本人の純資産中央値は約2036万円で、アメリカの約2倍とされています。
資産格差も、比較対象となった国や地域の中では小さい方に位置しています。
さらに、日本人の純資産中央値は、過去5年間で50%以上増加しました。
これらの数字を見る限り、日本は一部の富裕層しか資産を持っていない国でも、国民全体が何も蓄積できていない国でもありません。
長い時間をかけて住宅ローンを返済し、預貯金を積み上げ、株式や投資信託を保有してきた人々の資産が、日本社会の中に広く存在しています。
まとめ
UBSのグローバル・ウェルス・レポートからは、日本に対する一般的な悲観論とは異なる姿が見えてきます。
日本には純資産100万ドル以上のミリオネアが約290万人存在し、その人数はアメリカ、中国に次ぐ世界第3位です。
2025年だけでも3万1428人増加し、単純計算では1日当たり約86人が新たにミリオネアの基準を超えたことになります。
日本人の平均純資産は約3178万円、中央値は約2036万円とされ、中央値はアメリカのおよそ2倍、ドイツのおよそ2.5倍です。
日本の成人の51%強が純資産1500万円以上を持ち、資産格差も世界的には比較的小さい水準にあります。
ただし、ミリオネアの中には、自宅や土地の価格上昇によって純資産が増えた人も含まれています。
統計上は富裕層でも、自由に使える現金が多いとは限りません。
「家は富裕層、財布は普通」という状態に加え、円安やインフレによって生活コストが上昇しているため、多くの人が豊かさを実感しにくくなっています。
そのため、自宅や土地だけでなく、現金、株式、投資信託など、必要なときに動かせる金融資産を持つことも重要です。
世界では最下層から1つ上の資産層へ移る人が増える一方、上位1.5%のミリオネアが世界の富の48.4%を保有しています。
給料だけでは資産価格の上昇に追いつけない局面もあるため、少額でも資産を持つ側へ移ることの重要性は高まっています。
まだ投資を始めていない人は、無理のない範囲で小さく始めることができます。
すでに積み立てを続けている人は、短期的な値動きに焦らず、生活を壊さない範囲で継続することが大切です。
投資は、自分だけが大金持ちになるための競争ではありません。
自分と家族の選択肢を増やし、日本の分厚い中間層を守り、将来への不安を少しずつ減らすための手段でもあります。
日本には課題がある一方で、安全性、清潔さ、社会的な信頼、自然や食文化など、資産残高には表れない豊かさも残されています。
数字だけで日本を「オワコン」と決めつけるのではなく、現在持っている資産や社会的な強みを正しく評価しながら、将来に向けて資産形成を続けていくことが重要です。
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