本記事は、YouTube動画『NISA貧乏でも全力投資すべき?余剰資金と若いうちの資産形成を考える』の内容を基に構成しています。
新NISAの普及によって、毎月の積立投資を始める人が増えました。その一方で、「NISA貧乏」や「現金枯渇」といった言葉も使われるようになっています。
NISAへの入金を優先するあまり、手元の現金が減り、日々の生活に余裕がなくなっている状態を表した言葉です。
一般的な金融記事では、こうした状況について「投資は余剰資金で行いましょう」「今の生活を犠牲にしてまで積み立てるべきではありません」と注意を呼びかけています。
一見すると、安全で常識的な考え方です。
しかし今回の動画では、この「余剰資金で無理なく投資する」という言葉に疑問を投げかけています。
本当に、なくなっても困らない余剰資金など存在するのでしょうか。
今を犠牲にしない選択は、将来の自分に犠牲を先送りすることにならないのでしょうか。
動画では、NISA貧乏を単に危険な状態として批判するのではなく、人生全体におけるお金の配分という視点から考えています。
「NISA貧乏」「現金枯渇」という記事への違和感
動画では、登場人物がニュース記事の中で「NISA貧乏」「現金枯渇」という言葉を見つけるところから話が始まります。
記事には、NISAへの投資を優先しすぎた結果、生活に必要な現金まで投資に回し、家計が苦しくなっている人がいると書かれていました。
主な内容は、全力投資は避けるべき、生活防衛資金を持つべき、NISAは無期限なので焦る必要はない、今を犠牲にして投資すべきではない、といったものです。
これらは一般的な資産形成の考え方として、間違いではありません。
病気や失業、家電の故障、冠婚葬祭など、人生では突然まとまった現金が必要になります。すべてを投資に回してしまえば、相場が下落している時に資産を売却しなければならない可能性もあります。
そのため、一定の生活防衛資金を持つことは重要です。
一方で動画では、こうした記事が、投資を頑張る人に対する余計なお世話になっているのではないかと指摘しています。
余裕のある人だけが投資すればよいと考えていると、多くの人がいつまでたっても資産形成を始められないからです。
なくなってもよい余剰資金は存在するのか
「投資は余剰資金で行いましょう」という言葉の根底には、投資には元本割れのリスクがあるという事実があります。
株式や投資信託の価格は毎日変動し、投資直後に大きく下落することもあります。個別株であれば、企業が倒産し、株式の価値がほぼ0になる可能性もあります。
そのため、なくなっても生活に困らない範囲で投資するという考え方には合理性があります。
しかし動画では、そもそも、なくなっても生活に影響しないお金など本当にあるのかと問いかけています。
今使わないお金も将来は必要になる
現時点で使う予定がないお金でも、将来まで含めれば必要になる可能性があります。
今すぐ使わない100万円も、住宅購入、子どもの教育費、病気への備え、老後資金などに使えるお金です。
現在の生活だけを見れば、なくなっても大きな支障はないかもしれません。しかし人生全体で見れば、そのお金がなくなったことで老後資金が不足する可能性もあります。
つまり、今使わないお金と、なくなってもよいお金は同じではありません。
動画では、ほとんどの人にとって、人生全体で見た完全な余剰資金は存在しないと説明しています。
人生は限られたお金の配分ゲーム
動画では、人生を「配分ゲーム」と表現しています。
限られた収入を、日々の生活、趣味、住宅、車、旅行、教育、貯金、投資、老後などにどう振り分けるかを考えるのが人生です。
すべての希望を同時にかなえられる人は多くありません。
旅行が好きな人は、普段の外食を減らして旅行費を作ります。車が好きな人は、他の趣味を抑えてローンや維持費を支払います。
資産形成を重視する人は、消費を抑えて投資に回します。
どれも、その人が大切だと考えるものにお金を配分しているだけです。
余裕がないからこそ投資を始める
一般的には、お金に余裕ができてから投資を始めるべきだと考えられがちです。
しかし動画では、余裕がないからこそ投資を始める人もいると説明しています。
労働収入だけでは、人生全体に必要なお金を準備できないと気づいたからです。
毎月の給与から貯金するだけでは、住宅費、教育費、老後資金などを十分に用意できないかもしれません。
そこで、株式市場の成長や複利の効果を利用して資産を増やそうと考えます。
投資を始める理由は、余ったお金を増やしたいからだけではありません。
将来のお金が足りない可能性があるため、その不足を補う手段として投資を選んでいるのです。
「今を犠牲にするな」は犠牲の先送りかもしれない
NISA貧乏を扱う記事では、「今の生活を犠牲にしてまで投資するべきではない」と説明されることがあります。
しかし動画では、今を犠牲にしない選択は、単に犠牲を未来へ先送りしているだけではないかと指摘します。
現在の収入をすべて使い切れば、今の生活は充実するかもしれません。
その一方で、老後に収入が減った時、生活水準を強制的に落としたり、本来は引退したい年齢になっても働き続けたりする可能性があります。
現在の消費を少し抑えて投資すれば、今使えるお金は減ります。しかし、将来の選択肢は増える可能性があります。
重要なのは、犠牲を完全になくすことではありません。
どの時期に、どの程度の負担を引き受けるかを決めることです。
将来の収入増加に期待しすぎない
今は投資をしなくても、将来出世して収入が増えると考える人もいます。
事業や副業で成功し、一気に資産を築けると期待する人もいるでしょう。
実際に成功する人はいますが、すべての人が出世できるわけではなく、一発で成功できる人も一部です。
将来の昇給や成功だけを前提に資産形成を先送りすると、想定どおりにならなかった時の修正が難しくなります。
そのため、早い時期から少額でも資産形成を始めることには意味があります。
NISA貧乏は旅行好きや車好きと変わらない
動画では、手取り月収30万円の3人を例に挙げています。
旅行好きのAさんは、旅行を楽しみながら毎月27万円を使い、3万円を貯金します。
車好きのBさんは、ローン、駐車場代、ガソリン代などがかかるため、毎月29万円を使い、1万円を貯金します。
投資好きのCさんは、資産が増えることに楽しさを感じ、毎月12万円を投資します。
一般的には、Cさんだけが「NISA貧乏」「投資しすぎ」と評価されるかもしれません。
しかし、3人とも自分がやりたいことのために、他の支出を調整している点では同じです。
旅行好きの人が旅行費を作るために節約するのと、投資好きの人が入金額を増やすために節約するのは、本質的には大きく変わりません。
投資は楽しみながら資産も残る
旅行や車にお金を使えば、その対価として経験や満足感が得られます。
ただし、使ったお金の多くは消費されます。
一方で、投資したお金は価格変動のリスクはあるものの、資産として残ります。長期的に成長すれば、投資額以上に増える可能性もあります。
投資が好きな人は、資産形成そのものを楽しみながら、将来のお金も準備していることになります。
この点が、一般的な消費型の趣味との大きな違いです。
毎月の積立額で30年後は大きく変わる
動画では、3人が30年間、それぞれの方法でお金を貯めたり投資したりした場合を比較しています。
Aさんが毎月3万円を現金で貯めると、30年後は1080万円です。
Bさんが毎月1万円を貯めると、360万円です。
Cさんが毎月12万円をS&P500へ投資し、年率7%で運用できたと仮定すると、30年後は約1億4000万円になると紹介されています。
また、AさんとBさんも貯金ではなく同じ条件で投資した場合、Aさんは約3660万円、Bさんは約1220万円になります。
もちろん、年率7%は保証された数字ではありません。
相場には好調な時期も不調な時期もあり、暴落や長期低迷も起こります。手数料、税金、為替によっても結果は変わります。
ただし、この比較は、毎月の積立額と運用期間が将来の資産額に大きな違いを生むことを示しています。
人は目先の利益を優先する
動画では、人が将来より現在を優先する心理として「現在バイアス」を紹介しています。
現在バイアスとは、将来得られる大きな利益より、今すぐ得られる小さな利益を高く評価してしまう傾向です。
今日の外食や旅行、買い物はすぐに満足感を与えてくれます。
一方で、投資の成果が現れるのは10年後、20年後、30年後かもしれません。
そのため、資産形成が重要だと理解していても、目の前の消費を優先しやすくなります。
将来の自分を別人のように考える
人は遠い将来の自分を、現在の自分とは別の人物のように考える傾向があります。
30歳の人にとって、32歳の自分は想像しやすくても、50歳や60歳の自分は現実感が薄くなります。
将来の自分は欲がなく、お金もあまり必要としないだろうと、都合よく考えてしまうこともあります。
しかし実際には、年齢を重ねても自分は自分です。
健康である限り、旅行をしたい、趣味を楽しみたい、おいしいものを食べたいという欲求は残ります。
その一方で、体力や働く力は低下し、医療費や介護費が増える可能性があります。
将来の自分にも、現在と同じようにお金が必要になると考えるべきです。
年齢とともに人的資本は減っていく
動画では、お金の価値が年齢とともに高くなる理由として「人的資本」を挙げています。
人的資本とは、その人が将来の労働によって収入を得られる能力を、資産として考えるものです。
若い人には、これから何十年も働ける時間があります。
現在の貯金が少なくても、将来の給与収入によって立て直せる可能性があります。転職や学び直しによって収入を増やす選択肢もあります。
一方、年齢を重ねると、残された労働期間は短くなります。
体力や健康状態によって働き方が制限され、転職市場での選択肢も狭くなる可能性があります。
若い頃は人的資本が大きいため、金融資産ではある程度リスクを取れます。
年齢を重ねた後は、それまでに築いた金融資産によって、減少した労働収入を補う必要があります。
「若い時にしかできないこと」の意味
資産形成の話をすると、「若い時にしかできない経験がある」「年を取ってからお金を持っていても意味がない」と言われることがあります。
確かに、若い時にしかできない旅行や挑戦、家族との時間はあります。
すべてを我慢し、将来のためだけに生きることが正しいわけではありません。
しかし動画では、「若い時にしかできない」という言葉が、現在の消費を正当化するために使われすぎているのではないかと指摘します。
高額なお金を使った経験が、必ずしも価値ある思い出になるとは限りません。
むしろ、仕事で困難を乗り越えた経験、何かに熱中した時間、筋力トレーニング、読書、家族との時間など、お金をあまり使わない経験の方が長く残ることもあります。
こうした経験には、知識、価値観、能力、体力、人間関係など、自分自身の変化が伴います。
重要なのは、「若いうちだから」という理由だけで消費するのではなく、本当に自分にとって価値のある支出なのかを考えることです。
若い時にしかできないことは全力投資
動画では、若い時にしかできないことの1つは、全力投資ではないかと主張しています。
これは、生活費まですべて株式に入れるという意味ではありません。
若い人は人的資本が大きいため、金融資産では一定のリスクを取りやすいという考え方です。
若ければ、投資で一時的な損失が出ても、その後の給与収入で立て直す時間があります。
長期投資であれば、相場が回復するまで待てる可能性も高くなります。
体力があり、転職、副業、学び直しといった選択肢も取りやすいでしょう。独身で扶養家族がいなければ、守るべき生活費も比較的少なくなります。
このように人的資本のリスクが小さい時期に、S&P500や全世界株式などのインデックス投資へ積極的に配分することで、人生全体のバランスを取れるというのが動画の考え方です。
結婚や子育て後は現金を厚くする
動画でも、誰もが無条件に全力投資すべきだと主張しているわけではありません。
結婚し、子どもが生まれれば、必要な生活防衛資金は増えます。
住宅費、教育費、保険料などの固定費も増え、失業や病気が家族全体に影響します。
この状態で手元資金を極端に減らすと、予想外の支出に対応できません。
相場が暴落している時に投資信託を売却し、損失を確定させる可能性もあります。
したがって、積極的に投資する場合でも、必要な現金は確保するべきです。
生活防衛資金と余剰資金は別物
生活防衛資金とは、失業、病気、急な修理費などに備えるための現金です。
近い将来使う可能性があるため、価格変動の大きい資産へ投資するのには向いていません。
一方、余剰資金という言葉は曖昧です。
完全になくなってもよいお金と定義すれば、ほとんどの人に余剰資金は存在しません。
しかし、10年以上使う予定がなく、価格が下落しても売却せずに保有できるお金と考えれば、長期投資に回せる資金はあります。
「余剰資金で投資しましょう」という言葉をそのまま受け取るのではなく、自分にとっての意味を具体的に決める必要があります。
NISAは無期限でも時間は重要
新NISAは非課税保有期間が無期限であるため、毎年必ず上限まで投資する必要はありません。
家計が苦しい年に、無理をして枠を埋める必要もありません。
ただし、無期限だから投資開始を遅らせても同じというわけではありません。
長期投資では、運用期間の長さが重要です。
早く始めれば、それだけ複利が働く期間が長くなります。
焦って生活を壊す必要はありませんが、必要以上に先送りすることにも注意が必要です。
「失われた30年」と海外株投資
動画で取り上げられた記事には、若い世代は日本の「失われた30年」を経験していないため、株式投資への警戒が足りないという内容もありました。
日本株はバブル崩壊後、長期間低迷しました。
その経験を持つ世代が投資に慎重になるのは自然です。
一方、現在のNISA利用者の多くは、日本株だけでなく、S&P500や全世界株式型の投資信託を利用しています。
これらは米国や世界中の企業へ分散投資する商品なので、日本株の長期低迷をそのまま当てはめることはできません。
ただし、S&P500や全世界株式なら安全という意味でもありません。
世界的な金融危機、景気後退、戦争、金利上昇などによって、大幅に下落する可能性はあります。
過去の日本株だけを理由に投資を否定するのでもなく、最近の上昇だけを見て楽観するのでもなく、リスクを理解して続けることが重要です。
全力投資は手元資金を0にすることではない
動画で繰り返される「全力投資」を、銀行口座の残高をほぼ0にして投資することだと受け取るのは危険です。
現実的な全力投資とは、家計、年齢、収入、家族構成、将来の予定を考えたうえで、可能な範囲を最大限活用することです。
同じ手取り30万円でも、家賃が低く、借金がなく、十分な預金がある人と、住宅ローンや教育費を抱えている人では、無理なく投資できる金額が異なります。
積立額の多さだけでは、投資しすぎかどうかは判断できません。
相場が下落した時や、収入が途絶えた時にも生活を維持できるかどうかが重要です。
NISA貧乏が危険になる状態
NISAへの入金を優先すること自体が悪いわけではありません。
ただし、家賃や公共料金の支払いが遅れている、生活費を借金で補っている、クレジットカードのリボ払いを利用している、医療費や修理費を払えない、数年以内に使うお金まで投資している、といった状態なら積立額を見直す必要があります。
必要な食事や医療まで削っている場合も危険です。
特に、高金利の借金を抱えながら投資を続けると、投資の期待リターンより借入金利の負担が大きくなる可能性があります。
NISAの枠を埋めることは、生活の安定より優先すべき義務ではありません。
NISA貧乏が合理的な選択になる場合
外から見ると極端な節約生活に見えても、本人が納得し、家計に問題がない場合もあります。
旅行や高級品に関心がなく、自宅で過ごすことが好きな人なら、消費を抑えることに苦痛を感じないかもしれません。
資産残高が増えること自体を楽しめる人もいます。
十分な生活防衛資金があり、無理なく投資を続けているなら、他人が「もっと今を楽しむべきだ」と決めつける必要はありません。
問題は投資額が大きいことではなく、家計が破綻するほど無理をしていることや、目的を持たず周囲に流されていることです。
投資の目的を明確にする
投資は、残高を増やすこと自体が最終目的ではありません。
老後資金、住宅購入、教育費、早期退職など、目的によって必要な金額や期間は変わります。
目的が明確であれば、毎月いくら積み立てる必要があるのかを逆算できます。
反対に、NISAの上限を埋めることだけを目標にすると、生活とのバランスを失いやすくなります。
投資は人生を豊かにするための手段です。
積立額を増やすことそのものが、人生の目的にならないよう注意が必要です。
まとめ
今回の動画では、「NISA貧乏」「現金枯渇」といった言葉で投資を抑制する風潮に対し、人生全体のお金の配分という視点から反論しています。
「余剰資金で無理なく投資する」という言葉は、安全で正しい助言に見えます。
しかし人生全体で考えれば、完全になくなっても困らないお金を持っている人は多くありません。
多くの人が投資をするのは、お金が余っているからではなく、労働収入だけでは将来必要なお金を準備できないと考えているからです。
また、今を犠牲にしないという選択は、将来へ負担を先送りしている可能性があります。
現在の消費を優先しすぎれば、老後に生活水準を落としたり、働き続けたりしなければならないかもしれません。
旅行好き、車好き、投資好きは、いずれも自分が大切だと考えるものへお金を配分しています。
投資を楽しめる人にとって、NISAへの入金は単なる我慢ではなく、将来の選択肢を増やす行動でもあります。
一方で、生活費を払えない、借金をして投資する、近いうちに必要なお金まで市場へ入れるといった行動は危険です。
大切なのは、「NISA貧乏」という言葉だけで投資を否定することでも、「全力投資」という言葉だけで無理をすることでもありません。
何のために投資するのか、どれだけ現金を持つ必要があるのか、現在と将来へどのようにお金を配分するのかを、自分自身で決めることです。
NISAの枠を埋めることではなく、投資によって将来の選択肢を増やし、自分が望む人生を実現することが資産形成の本来の目的です。
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