住宅業界でよく使われる「ツボ単価(坪単価)」という言葉と、その裏に潜む悪徳な手口について解説します。
ツボ単価とは、建物の価格を延べ床面積(坪数)で割って算出する価格指標であり、これが住宅の価格相場を知る手がかりになりますが、実は非常に誤解を招きやすいものです。
ツボ単価とは?
ツボ単価とは、1坪(約3.3平方メートル)あたりの建築コストを指します。
たとえば、延べ床面積が30坪で建物価格が2,100万円の場合、ツボ単価は70万円となります。これだけ見ると、非常に簡単で便利な指標のように思えますが、実際にはこの数字が表すものには多くの落とし穴があります。
悪徳住宅会社の手口
ツボ単価を低く見せかけて契約を取り、後から追加費用を請求する手法は、住宅業界でよく使われる典型的な悪徳商法です。以下に代表的な手口をいくつか紹介します。
1. 不工事の除外
住宅の工事費用には「本体工事」と「不工事(付帯工事)」の2つがあります。
本体工事とは、壁や屋根、キッチン、浴室など、建物そのものに関わる工事を指します。一方、不工事とは、仮設トイレの設置や土台作り、水道管の敷設など、建物以外の準備作業を指します。
悪徳住宅会社は、不工事の費用をツボ単価から除外して提示することがあります。
たとえば、建物価格が2,100万円でも、本体工事が1,800万円、不工事が300万円だとした場合、本体工事のみでツボ単価を計算すると60万円となります。
しかし、実際には不工事を含めた全体での計算が必要であり、この手法で騙されると、後から数百万円の追加費用が発生する可能性があります。
2. 性能や標準仕様の低下
ツボ単価を安く見せるために、住宅の性能や標準仕様を大幅に下げた計算をすることもあります。
たとえば、断熱材やキッチンのグレードが最低限のもので見積もりされており、契約後に「このキッチンはグレードアップが必要です」「断熱性能を上げるためには追加費用がかかります」と言われることが多いです。
3. 特殊な間取りでの計算
さらに、住宅の間取りを工夫してツボ単価を下げる手法もあります。
たとえば、1階が15坪、2階も15坪という「総2階建て」は、最もコストが抑えられる間取りです。屋根や基礎の面積が減るため、コストが安くなるのです。
しかし、1階部分を広くして2階を小さくするなど、少しでも間取りを変えると一気にコストが増えます。このように、契約時に見積もりが安く見えるように総2階で計算され、後から間取りを変更すると大幅な追加費用が発生することがあります。
4. 延べ施工面積の使用
一部の悪徳業者は、延べ床面積ではなく「延べ施工面積」でツボ単価を計算することもあります。
延べ施工面積とは、バルコニーや玄関ポーチなど、屋根がかかっている部分も含めた面積のことです。
たとえば、延べ床面積が30坪であっても、延べ施工面積が35坪であれば、その面積で計算するとツボ単価が低く見えます。しかし、これも実際の建物に対する価格を正しく反映しているわけではありません。
適正価格を見極めるためのポイント
ツボ単価だけで住宅の価格を判断するのは危険です。以下の点をチェックすることで、悪徳業者に騙されないようにしましょう。
1. 不工事を含めた総額で判断する
不工事を除外した見積もりは非常に安く見えますが、最終的にはこれを含めた金額で判断することが重要です。契約前に、必ず不工事の費用を確認しましょう。
2. 標準仕様や性能を確認する
住宅の性能や標準仕様が低すぎると、住んでからの快適さに影響します。
断熱材やキッチン、浴室など、標準仕様がどのようになっているかを細かく確認し、必要に応じてグレードアップの費用を確認しましょう。
3. 間取りの変動を考慮する
間取りが変わると、コストも大きく変動します。
総2階建てや窓が少ない四角い家は、コストが安く抑えられますが、実際に住むことを考えた場合に、それが本当に望ましい間取りかどうかを慎重に判断する必要があります。
実際の住宅価格の相場感
近年の住宅価格は、ツボ単価が5万円から10万円程度上昇しており、以前はツボ単価50万円程度だった住宅が、今では70万円以上になることも珍しくありません。
たとえば、ローコスト系の住宅メーカーでも、30坪で2,000万円以上が一般的です。一方、性能の高い住宅や大手ハウスメーカーでは、ツボ単価100万円を超えるケースも増えています。
まとめ
住宅を建てる際には、ツボ単価だけでなく、建物全体の性能や仕様、そして不工事を含めた総額を慎重に確認することが重要です。
また、間取りの変更やグレードアップによる追加費用も視野に入れておく必要があります。悪徳業者に騙されないためには、自分でしっかりと情報を集め、適正価格を見極める知識を持つことが大切です。
コメント