本記事は、YouTube動画『S&P500は買って放置すれば勝てるのか?長期投資で損する人と資産を増やす人の決定的な違い』の内容を基に構成しています。
S&P500は、買って放っておけば自然にお金が増えていく「魔法の金融商品」のように語られることがあります。
実際、長期チャートを見ると、S&P500は数々の暴落を乗り越えながら右肩上がりで推移してきました。そのため、S&P500に連動する投資信託やETFを積み立てていれば、誰でも資産を増やせるように思えるかもしれません。
しかし、現実には同じS&P500に投資しているにもかかわらず、大きく資産を増やす人がいる一方で、損失を抱えて市場から退場してしまう人もいます。
指数そのものは上昇しているのに、なぜ投資家は損をするのでしょうか。
その答えは、どの銘柄を選んだかという問題よりも、暴落時にどのような行動を取ったか、投資を続けられる仕組みを持っていたかという点にあります。
この記事では、史上最も運の悪い投資家と呼ばれる人物の物語を入り口に、S&P500が長期的に上昇してきた理由、インフレから資産を守る重要性、投資信託とETFのコスト、新NISAやiDeCoの活用方法、暴落時に売らないための仕組みづくりについて詳しく解説します。
S&P500が上昇しても損をする投資家がいる理由
S&P500の長期チャートを見ると、指数は大きな上下動を繰り返しながらも、最終的には過去最高値を更新してきました。
それにもかかわらず、多くの個人投資家は、指数本来のリターンを十分に得られていないとされます。
その最大の理由は、安いところで売り、高いところで買ってしまうからです。
市場が上昇し、ニュースやSNSで株高が話題になると、投資家は安心して株を買い始めます。ところが、市場が急落して含み損が拡大すると、今度は恐怖に耐えられなくなり、安値付近で売却してしまいます。
その後、市場が反発すると、再び上昇を確認してから買い戻します。
つまり、多くの投資家は次のような行動を繰り返しています。
- 相場が上昇した後に安心して買う
- 暴落すると恐怖に耐えられず売る
- 相場が回復してから再び買い直す
この行動では、「高く買って安く売る」ことになってしまいます。
S&P500に問題があるのではありません。問題は、価格変動に直面したときの投資家の行動にあります。
長期投資において最も危険なのは、暴落そのものではなく、暴落によって投資方針を変更してしまうことなのです。
史上最も運の悪い投資家「ジョニー」の物語
動画では、史上最も運の悪い投資家として「ジョニー」という人物が紹介されています。
ジョニーは過去約40年間で、株式市場にまとまった資金を投資したのは、わずか4回でした。
しかも、その4回すべてが歴史的な暴落の直前でした。
最初の投資は、1987年のブラックマンデー直前です。次は2000年のドットコムバブル崩壊直前、さらに2007年の世界金融危機直前、そして2020年の新型コロナショック直前でした。
ジョニーは、誰もが避けたいと考える最悪のタイミングで、毎回投資してしまったことになります。
投資直後には、株価が30%から50%近く下落する局面もありました。口座の評価額は大きく減少し、ニュースでは経済危機や市場崩壊が連日報じられました。
普通の投資家であれば、最初の暴落を経験した時点で株を売っていたかもしれません。
「株式投資は危険だ」
「もう2度と投資をしない」
そう考えて、市場から離れてしまった可能性もあります。
しかし、ジョニーは1度も売りませんでした。
含み損が30%になっても売らず、50%になっても売らず、ニュースが「世界経済の終わり」を叫んでいても売りませんでした。
そして、次の投資資金が貯まるまで待ち、資金ができると再び株を買いました。
ジョニーが行ったことは極めて単純です。
1度も売らず、資金ができたら買い続けたのです。
高度なテクニカル分析を使ったわけでもありません。企業内部の特別な情報を持っていたわけでもなく、景気の転換点を正確に予測したわけでもありません。
最悪のタイミングで買い続けながら、それでも市場から退出しなかったことで、長期的には大きな資産を築いたという物語です。
最適な買い場を当てるより市場に居続けることが重要
ジョニーの物語が示しているのは、最適な買い場を正確に当てることが、長期投資の絶対条件ではないということです。
投資家は、できるだけ安いところで買いたいと考えます。
しかし、現在の価格が本当に安いのか、それともさらに下がるのかを事前に正確に判断することは困難です。
暴落の底は、常に後から振り返って初めて分かります。
そのため、最安値を狙い続けていると、いつまでも買えない可能性があります。株価が下がるのを待っているうちに市場が上昇し、買う機会を失うこともあります。
長期投資において重要なのは、相場のタイミングを当てることではなく、市場にいる時間を長くすることです。
S&P500は過去に何度も深刻な危機を経験してきました。
1987年のブラックマンデー、2000年前後のドットコムバブル崩壊、2008年の世界金融危機、2020年の新型コロナショックなど、そのたびに株価は大きく下落しました。
戦争、金融危機、景気後退、インフレ、金利上昇、貿易摩擦など、市場を揺るがす出来事は繰り返し発生しています。
そして、暴落が起きるたびに「今回はこれまでとは違う」「米国株はもう終わりだ」と言われてきました。
しかし、長期的に見ると、S&P500は危機を乗り越え、過去最高値を更新してきました。
もちろん、今後も必ず同じ結果になるとは断言できません。過去の実績は将来の利益を保証するものではないからです。
それでも、短期的な恐怖によって売買を繰り返すよりも、長期的な成長を信じて市場に残り続けるほうが、過去のデータ上は有利だったと考えられます。
S&P500の長期平均リターンは約10%
S&P500の長期的な年平均リターンは、配当を含めるとおおむね年率10%前後と紹介されることがあります。
ただし、この数字は毎年安定して10%ずつ上昇するという意味ではありません。
ある年は20%以上上昇することもあれば、30%以上下落することもあります。数年間ほとんど資産が増えない時期が続く可能性もあります。
長期平均とは、激しい上昇と下落をすべて含めて、数十年間保有した結果として計算される数字です。
そのため、年率10%という数字だけを見て、短期間で資産が順調に増えると期待するのは危険です。
長期投資の成果を左右するのは、暴落時にも売却せずに保有を続けられるかどうかです。
さらに、価格が高いと感じる時期でも安いと感じる時期でも、一定のルールで買い続けられるかが重要になります。
時間という武器は、投資タイミングの失敗を徐々に薄めてくれます。
最悪に見えるタイミングで投資したとしても、十分に長い時間をかけて保有し、追加投資を続ければ、平均取得価格を調整できる可能性があります。
投資をしないとお金の価値が減っていく
ここで、そもそもなぜ投資をする必要があるのかを考える必要があります。
口座の数字が増えること自体が、投資の最終目的ではありません。
投資が必要になる大きな理由の1つは、インフレによって現金の購買力が低下するからです。
インフレとは、商品やサービスの価格が継続的に上昇する現象です。
現金を銀行口座や金庫に置いておけば、額面上の金額は減りません。しかし、物価が上昇すると、そのお金で買える商品やサービスの量が減っていきます。
100万円という数字が変わらなくても、10年前に100万円で買えたものが、現在は120万円や150万円になっていれば、実質的にはお金の価値が減っています。
身近な例として、ラーメンの価格が挙げられます。
以前は1杯300円から500円程度で食べられたラーメンが、現在では900円から1,200円程度になることも珍しくありません。
これは単純にラーメンの品質が3倍になったという話ではありません。
原材料費、人件費、光熱費、家賃、輸送費などが上昇し、同時にお金の購買力が低下しているのです。
現金だけを保有していれば、名目上の金額は守られます。しかし、生活に必要な商品やサービスの価格が上がれば、実質的な資産価値は減少します。
投資は単に金持ちになるための手段ではありません。
長い時間をかけて働き、貯めてきたお金の価値を、インフレから守るための手段でもあります。
S&P500が長期的に上昇してきた3つの理由
S&P500への長期投資を続けるためには、なぜS&P500が上昇してきたのかを理解する必要があります。
理由を理解しないまま「米国株は上がるらしい」と信じているだけでは、暴落時に恐怖に負けてしまいます。
一方で、指数が成長する仕組みを理解していれば、短期的な下落を冷静に受け止めやすくなります。
動画では、S&P500が長期的に上昇する理由として、大きく3つの要素が挙げられています。
企業利益が長期的に成長している
株価の長期的な上昇を支えるのは、最終的には企業の利益です。
短期的には、期待や投機、金利、政治情勢などによって株価が大きく動きます。しかし、長期的には企業がどれだけ利益を生み出し、利益を成長させられるかが重要になります。
S&P500を構成する企業の利益が増えれば、1株あたり利益であるEPSも成長します。
企業が稼ぐ力を高め、配当や自社株買いを通じて株主へ利益を還元すれば、株価を押し上げる要因になります。
近年では、AI関連投資が企業利益を成長させる要因の1つとして注目されています。
AIは当初、データセンターの建設や半導体の購入、サーバーの増設など、多額の費用が必要な分野として見られていました。
そのため、「莫大な資金を消費するだけで、本当に利益につながるのか」という疑問もありました。
しかし、AI関連の需要は、半導体だけでなく、サーバー、ネットワーク機器、電力設備、クラウドサービス、業務用ソフトウェアなどへ広がっています。
AI投資による恩恵を受ける企業の範囲が広がり、売上や利益に結びつく例も増えてきました。
もちろん、すべてのAI関連企業が成功するとは限りません。過剰投資や競争激化によって業績が悪化する企業も出てくるでしょう。
それでも、AIという技術革新が新しい需要や利益を生み出す可能性は、S&P500の企業利益を支える要因の1つになっています。
S&P500には銘柄を入れ替える自浄作用がある
S&P500は、同じ500社を永久に保有し続ける指数ではありません。
企業の規模、流動性、収益性、米国企業としての要件など、一定の基準を満たす企業によって構成されています。
競争力を失い、業績が悪化した企業は指数から除外されることがあります。一方、新しい産業で成長し、大きな利益を生み出すようになった企業は指数に採用されます。
つまり、S&P500は固定された企業の集合ではなく、企業が入れ替わり続ける仕組みです。
過去には、エネルギー企業や製造業が大きな割合を占めていた時代がありました。
その後、情報技術やインターネットが成長すると、IT企業の存在感が高まりました。現在では、大手テクノロジー企業、半導体企業、クラウド関連企業などが指数の上昇をけん引しています。
将来、別の産業が大きく成長すれば、S&P500はその産業を代表する企業を取り込んでいく可能性があります。
個人投資家が次の成長企業を事前に予測することは簡単ではありません。
しかし、S&P500に投資していれば、成長して指数に採用された企業を、指数の仕組みを通じて間接的に保有できます。
S&P500への投資とは、現在の上位企業だけを買うことではありません。
米国市場で成長し、生き残り、利益を拡大する企業が入れ替わり続ける構造に投資することだと考えられます。
世界中の資金が米国市場に集まりやすい
米国市場も常に順調なわけではありません。
景気後退や金融危機、バブル崩壊が起きることもあります。米国経済の成長が鈍化する時期もあるでしょう。
それでも、世界の投資資金は長期的に米国市場へ集まりやすい構造を持っています。
その理由として、市場の流動性、企業情報の開示制度、会計の透明性、株主還元、技術革新、資本市場の規模などが挙げられます。
また、S&P500を構成する大企業の多くは、米国内だけで事業を行っているわけではありません。
世界各国で商品やサービスを販売し、世界中から売上を得ています。
そのため、S&P500への投資は米国経済だけに投資するというよりも、米国市場に上場するグローバル企業へ投資する側面もあります。
重要なのは、米国が永遠に世界の中心であり続けると盲目的に信じることではありません。
世界で高い利益を生み出す企業が、今後も米国市場やS&P500に集まりやすい構造が続くかを考えることです。
その可能性が高いと判断するのであれば、S&P500への投資は単なる楽観論ではなく、企業利益と資本市場の構造に対する投資になります。
同じS&P500でもリターンに差が出る理由
S&P500への長期投資を決めた後も、注意すべき点があります。
同じS&P500に連動する商品を買っているにもかかわらず、最終的なリターンに差が生じることがあるからです。
その原因の1つがコストです。
多くの投資家は、投資信託の信託報酬やETFの経費率だけを確認して商品を選びます。
もちろん、信託報酬や経費率は重要です。
しかし、実際の運用には、売買コスト、監査費用、為替交換コスト、指数とのずれであるトラッキングエラーなど、目に見えにくいコストが発生することがあります。
小さな差に見えても、20年、30年と運用を続ければ、その差は無視できません。
米国ETFの経費率を比較する
米国市場には、S&P500に連動する複数のETFがあります。
代表的なETFとして、SPY、VOO、SPLGなどが挙げられます。
SPYは歴史が長く、取引量が非常に多いETFです。一方、長期保有を目的とする投資家からは、VOOやSPLGのような経費率の低い商品も人気があります。
動画では、おおよその経費率として次の数字が紹介されています。
- SPY:約0.09%
- VOO:約0.03%
- SPLG:約0.02%
どの商品もS&P500への連動を目指していますが、経費率には差があります。
年間0.06%や0.07%の違いは、短期的には小さく見えるかもしれません。
しかし、運用金額が大きくなり、運用期間が長くなるほど、その差は複利によって拡大します。
ただし、経費率だけで商品を決めるべきではありません。
売買のしやすさ、取引量、スプレッド、分配金、証券会社の手数料なども含めて比較する必要があります。
日本からS&P500へ投資する2つの方法
日本の個人投資家がS&P500へ投資する方法は、大きく分けて2つあります。
1つは、国内で販売されている投資信託を購入する方法です。
もう1つは、米国市場に上場しているETFを直接購入する方法です。
国内の投資信託を購入する
国内のS&P500連動型投資信託には、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)、SBI・V・S&P500インデックス・ファンド、楽天・S&P500インデックス・ファンドなどがあります。
国内投資信託の大きな利点は、円で購入できることです。
証券会社によっては100円程度から積み立てられ、自動積立の設定も簡単です。
分配金を出さず、ファンド内部で再投資するタイプの商品であれば、投資家が自分で配当を再投資する必要もありません。
新NISAのつみたて投資枠に対応している商品も多く、長期積立との相性が良い方法です。
一方、ファンドによって信託報酬や実質コスト、純資産総額などが異なるため、比較は必要です。
米国ETFを直接購入する
米国ETFを直接購入する場合は、SBI証券や楽天証券などの外国株口座を利用して、VOOやSPY、SPLGなどを購入します。
米国ETFは経費率が低く、取引時間中にリアルタイムで売買できる点が特徴です。
一方、購入時には日本円を米ドルへ交換する必要があり、為替手数料がかかる場合があります。
分配金が米ドルで支払われるため、自分で再投資する手間も発生します。
また、外国税額控除を利用する場合には、確定申告が必要になることがあります。
国内投資信託と米国ETFのどちらが絶対に正しいということではありません。
手軽さ、自動積立、税務処理の簡単さを重視するなら国内投資信託が利用しやすいでしょう。
経費率やリアルタイム取引を重視し、外国株の管理に慣れている人であれば、米国ETFも選択肢になります。
コスト以上に重要な税制優遇口座
長期投資では、商品のコストだけでなく、どの口座で運用するかが非常に重要です。
同じS&P500に投資し、同じリターンを得たとしても、課税口座と非課税口座では最終的に手元に残る金額が大きく異なります。
日本の個人投資家にとって、代表的な口座は新NISA、iDeCo、特定口座です。
新NISAを優先して活用する
新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて、年間最大360万円まで投資できます。
非課税保有限度額は、生涯で合計1,800万円です。このうち成長投資枠で利用できるのは最大1,200万円となっています。
通常、株式や投資信託の売却益や配当、分配金には約20.315%の税金がかかります。
100万円の利益が出た場合、課税口座では約20万円が税金として差し引かれます。
新NISA口座で得た売却益や国内で課税される配当などは、一定の条件のもとで非課税になります。
そのため、長期的にS&P500の投資信託を積み立てるのであれば、まず新NISAの非課税枠を利用することが基本的な選択肢になります。
ただし、米国株や米国ETFの配当には、米国側で税金が差し引かれる場合があります。
NISAは日本国内の課税を非課税にする制度であり、外国で課される税金まで必ず免除されるわけではありません。
特定口座はNISA枠を超えた資金の受け皿になる
新NISAの投資枠を使い切った後も投資資金に余裕がある場合は、特定口座を利用することになります。
特定口座の「源泉徴収あり」を選べば、売却益や配当などに対する税金を証券会社が計算し、原則として自動的に納付します。
確定申告の手間を減らせる点がメリットです。
一方、利益には約20.315%の税金がかかります。
長期運用によって利益が大きくなるほど、税額も大きくなります。
そのため、非課税枠を利用できる間は、課税口座よりも新NISAを優先する意義が大きくなります。
老後資金ならiDeCoも有力
老後資金を準備する目的であれば、iDeCoも選択肢になります。
iDeCoでは、掛金が所得控除の対象となり、運用中の利益も非課税です。
受け取り時には、受け取り方や加入期間などに応じて、退職所得控除や公的年金等控除を利用できる場合があります。
ただし、iDeCoの資金は原則として60歳まで引き出せません。
急な出費が発生しても、自由に引き出すことはできないため、生活防衛資金までiDeCoへ入れるべきではありません。
一方で、引き出せないことは、衝動的な売却や浪費を防ぐ仕組みとも考えられます。
新NISAは比較的自由に売却できますが、iDeCoは老後まで資金を固定することで、長期運用を継続しやすくする制度です。
口座の違いで20年後に200万円以上の差が生まれる
動画では、毎月3万円を20年間、年率8%で運用した場合の試算が紹介されています。
毎月3万円を20年間積み立てると、投資元本は次のようになります。
3万円×12カ月×20年=720万円
年率8%で複利運用できた場合、20年後の資産額はおおよそ1,700万円台になります。
仮に最終資産が約1,760万円になったとすると、元本720万円に対する運用利益は約1,040万円です。
新NISA口座で全額を非課税運用できたと仮定した場合、利益に対する国内の税金は0円となり、約1,760万円が残ります。
一方、特定口座で運用し、利益約1,040万円に約20.315%の税金がかかった場合、税額は約211万円です。
手元に残る金額は約1,549万円となります。
同じ金額を、同じ期間、同じ商品、同じ利回りで運用しても、利用する口座が違うだけで約211万円の差が生まれる計算です。
実際の運用結果は相場環境や売却方法、税制、手数料などによって変わります。
それでも、長期投資では運用商品のわずかな差よりも、非課税制度を利用できるかどうかが大きな影響を与えることがあります。
運用期間が30年、40年と長くなれば、複利によって利益額が大きくなるため、非課税の効果もさらに大きくなります。
長期投資では良い商品より良い口座が重要
多くの投資家は、どのS&P500投資信託が最も優れているのか、VOOとSPLGのどちらが良いのかと悩みます。
もちろん、信託報酬や経費率を比較することは大切です。
しかし、すでに低コストの商品同士を比較している場合、その差は非常に小さくなっています。
一方、新NISAと特定口座の税金の差は、利益に対して約20%です。
年間0.01%や0.02%のコスト差を細かく比較する一方で、新NISAの枠を使わずに特定口座で投資していれば、より大きな税負担が発生する可能性があります。
そのため、長期投資では次の順番で考えることが重要です。
- 生活に必要な現金を確保する
- 新NISAの非課税枠を活用する
- 老後資金として固定できる資金はiDeCoを検討する
- それでも余る投資資金は特定口座で運用する
細かな商品比較を始める前に、まず利用する口座を決める必要があります。
完璧な投資計画を壊すのは投資家自身の感情
S&P500へ長期投資する理由を理解し、低コストの商品を選び、新NISAやiDeCoを活用したとしても、それだけで成功が保証されるわけではありません。
長期投資の設計には、致命的な弱点があります。
それは、投資家自身の感情です。
市場が上昇している間は、誰でも長期投資を続けられるように感じます。
しかし、株価が短期間で20%、30%と下落し、数百万円の含み損が表示されたときにも、同じ方針を維持できるでしょうか。
暴落時には、テレビやインターネットで悲観的なニュースが増えます。
SNSでは「すべて売った」「米国株は終わった」「今回は回復しない」といった投稿が目立つようになります。
家族や友人から、投資をやめるように言われるかもしれません。
その状況で冷静に判断することは簡単ではありません。
人間の脳は、危険を感じると逃げるようにできています。
野生動物に襲われる可能性がある環境では、危険を察知して逃げる行動が生存につながりました。
しかし、株式市場では、恐怖を感じて売却したところが底値になることがあります。
人間の本能に従った行動が、投資では不利に働くことがあるのです。
暴落が起きる前に対応マニュアルを作る
暴落時に冷静な判断をするためには、市場が穏やかなうちに行動ルールを決めておく必要があります。
暴落が始まってから計画を立てようとしても、恐怖に支配された状態では合理的な判断ができない可能性が高いからです。
動画では、自分だけの暴落対応マニュアルを作る方法が紹介されています。
例えば、次のようなルールです。
- 高値から10%下落したら追加購入を始める
- 20%下落したら事前に確保した予備資金を投入する
- 30%下落したら残りの余剰資金を段階的に投入する
- どれだけ下落しても生活資金が必要でない限り売却しない
ただし、暴落時の追加投資ルールは、すべての人に適しているわけではありません。
30%下落した時点で資金を使い切り、その後さらに下落すれば、精神的に追い込まれる可能性があります。
追加投資をする場合も、生活費や緊急予備資金を使わないことが重要です。
暴落対応マニュアルは、スマートフォンのメモや紙に保存しておきます。
「暴落したときに開く」とタイトルを付けておけば、相場が急落した際に、冷静だった自分が決めたルールを確認できます。
これは、理性的な現在の自分から、恐怖に支配される未来の自分へ送る手紙です。
自動積立で投資判断を自分の脳から切り離す
長期投資を続けるために最も有効な方法の1つが、自動積立です。
毎月の給料日や決められた日に、一定額のS&P500投資信託を自動的に購入する設定を行います。
株価が高い月には少ない口数を購入し、株価が安い月には多くの口数を購入します。
一定額を定期的に購入することで、購入価格を時間的に分散できます。
これがドルコスト平均法と呼ばれる考え方です。
ドルコスト平均法を使えば必ず利益が出るわけではありません。また、一括投資より常に高いリターンになるわけでもありません。
それでも、投資判断を感情から切り離し、長期積立を継続しやすくする効果があります。
自動積立の最大の利点は、毎月「今は買うべきか」「もう少し下がるまで待つべきか」と考える必要がなくなることです。
アプリにログインする必要もなく、ニュースを確認する必要もありません。
投資判断の権限を自分の感情から取り上げ、事前に設定したシステムへ委ねます。
人間の脳は、株価が高騰しているときに買いたくなり、暴落しているときに売りたくなる傾向があります。
自動積立には感情がありません。
相場が上がっても下がっても、設定された金額を機械的に購入します。
長期投資では、優れた予測よりも、単純なルールを継続できる仕組みのほうが役立つことがあります。
S&P500への投資は信仰ではなく構造への投資
S&P500への投資は、米国株が無条件に上がり続けると信じる宗教ではありません。
S&P500も大きく下落することがあります。長期間にわたって低迷する可能性もあり、将来の利益が保証されているわけではありません。
それでも、S&P500には長期的な成長を支えてきた複数の要素があります。
企業利益の成長、成長企業を取り込む指数の入れ替え、世界中の資金が集まりやすい米国資本市場、株主還元を重視する企業文化などです。
S&P500へ投資するということは、特定の企業が永遠に成長すると予測することではありません。
市場競争の中で生き残り、利益を拡大する企業が指数へ取り込まれていく仕組みに投資することです。
ただし、この仕組みの恩恵を受けるには、投資家側にも必要な行動があります。
低コストの商品を選び、税制優遇口座を活用し、暴落時にも売却せず、自動積立を続けられる環境を整えることです。
S&P500長期投資で避けるべき失敗
S&P500への投資で失敗しやすい人には、いくつかの共通点があります。
まず、短期間で大きく儲けようとすることです。
S&P500は長期的な資産形成に利用されることが多い指数ですが、短期的には大きく下落します。
1年後や2年後に使う予定の資金を投資すれば、必要な時期に暴落が重なり、損失を確定せざるを得ない可能性があります。
次に、生活防衛資金まで投資することです。
病気、失業、住宅や自動車の修理など、人生には予想外の支出があります。
現金をほとんど持たずに投資していると、暴落時に生活費が必要になり、安値で売却することになります。
また、上昇相場で投資額を急激に増やし、暴落すると積立を止める行動も避ける必要があります。
本来、株価が下がった時期は、同じ金額で多くの口数を購入できます。
しかし、多くの人は価格が上昇しているときに積立額を増やし、価格が下がると怖くなって購入を止めます。
これでは、ドルコスト平均法の利点を十分に活用できません。
長期投資を続けるために必要なのは意思力ではない
長期投資を続けるために、強い精神力が必要だと思われることがあります。
しかし、意思力だけに頼る方法は不安定です。
相場が穏やかなときには強気でいられても、実際に大きな損失が表示されれば、考え方は変わります。
そのため、長期投資では感情を鍛えるよりも、感情が介入しにくい仕組みを作ることが重要です。
自動積立を設定し、確認する頻度を減らし、暴落対応ルールを事前に決めておきます。
さらに、投資する金額を、下落しても生活に影響しない範囲に抑えます。
暴落時に眠れなくなるほど投資しているのであれば、投資額が大きすぎる可能性があります。
長期投資は、最大限の資金を市場へ投入する競争ではありません。
暴落を経験しても投資を続けられる金額に調整することが、最終的な成功につながります。
まとめ
S&P500は、買った瞬間から必ず資産を増やしてくれる魔法の商品ではありません。
短期的には30%以上下落することもあり、何年にもわたって評価額が伸びない可能性もあります。
それでも、S&P500は企業利益の成長、構成銘柄の入れ替え、米国資本市場の競争力などを背景に、長期的には成長を続けてきました。
同じS&P500に投資していても、結果には大きな差が生まれます。
その差を生むのは、相場を正確に予測する能力ではありません。
暴落時に売らず、市場に残り続けられるかどうかです。
さらに、低コストの商品を選び、新NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用し、自動積立によって感情を投資判断から切り離すことも重要です。
史上最悪のタイミングで何度も投資したジョニーが資産を築けたのは、将来を正確に予測できたからではありません。
暴落しても売らず、資金ができたら買い続け、市場に残り続けたからです。
長期投資で本当に必要なのは、最高の買い場を見つけることではありません。
投資を続けられる金額を決め、税制とコストを理解し、相場がどのような状態でも継続できる仕組みを作ることです。
市場の未来を完全に予測することはできません。
しかし、どの口座を使うか、どの商品を選ぶか、毎月いくら積み立てるか、暴落時にどう行動するかは、自分で決められます。
自分でコントロールできない相場のタイミングを当てようとするのではなく、自分でコントロールできる行動を仕組み化することが、S&P500長期投資の基本といえるでしょう。
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