年金は60歳から受け取るべき?税金・社会保険料・住民税非課税世帯まで考える老後資金戦略
本記事は、YouTube動画『年金は断然60歳から!税金・社保・住民税非課税かが全然違う!』の内容を基に構成しています。
年金は65歳から受け取るのが本当に正解なのか
年金は65歳から受け取るもの。60歳から繰り上げ受給すると損をする。多くの人が、こうしたイメージを持っているのではないでしょうか。
しかし、年金の受け取り方は「額面の多い・少ない」だけで判断できるものではありません。税金、社会保険料、住民税非課税世帯に該当するかどうか、さらに60代前半の生活の自由度まで含めて考える必要があります。
動画では、60歳から年金を受け取る選択肢について、従来の「繰り上げは損」という見方だけでは不十分だと説明されています。特に2026年の制度改正にも触れながら、60歳受給を本気で検討する価値がある理由が解説されています。
60歳受給は本当に損なのか
公的年金は基本的に65歳から受け取る制度です。ただし、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることができます。
繰り上げ受給では、1か月早めるごとに年金額が0.4%減額されます。つまり、5年早めて60歳から受け取る場合、減額率は24%になります。
たとえば65歳から年間200万円の年金を受け取れる人が、60歳から繰り上げ受給を選んだ場合、年金額は24%減って年間152万円になります。月額で見ると、本来は約16万7000円だった年金が、約12万7000円になる計算です。
この数字だけを見ると、確かに60歳受給は損に見えます。しかし、重要なのは60歳から65歳までの5年間で先に受け取れる金額です。
年間152万円を5年間受け取ると、合計760万円になります。65歳受給を選んだ人は、この期間の年金収入がありません。つまり、60歳受給の人は65歳時点で760万円を先取りしていることになります。
65歳受給との差額は、年間200万円と152万円の差である48万円です。760万円を年間48万円の差で埋めるには、約15.8年かかります。つまり、単純な額面ベースでは、65歳から約16年後、だいたい81歳前後で累計受給額が逆転することになります。
損益分岐点は81歳前後という現実
60歳受給と65歳受給を比べた場合、額面上の損益分岐点はおおむね81歳です。
ここで考えたいのが、健康寿命です。動画では、健康寿命は男性が約72.57歳、女性が約75歳、平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳と紹介されています。
つまり、65歳受給の方が累計額で有利になり始める81歳という年齢は、健康寿命をかなり過ぎた後の話になる可能性があります。
老後資金は、人生の最後に最も多く残した人が勝ちというものではありません。元気なうちに旅行に行く、趣味を楽しむ、家族との時間に使う。こうした使い方にも大きな価値があります。
60歳受給は、単に早くお金をもらう制度ではなく、60代前半の自由度を高める選択肢とも言えます。
年金は額面だけでなく税金と社会保険料で見る
年金判断で見落とされやすいのが、税金と社会保険料です。
年金にも所得税や住民税、社会保険料が関係します。年金額が増えれば、その分すべてが手元に残るわけではありません。逆に、60歳受給で年金額が下がると、税金や社会保険料の負担が軽くなる可能性があります。
公的年金には公的年金等控除や基礎控除があるため、一定額までは税金がかかりにくい仕組みになっています。動画では、2026年の制度改正により、所得税がかからない目安が引き上げられていると説明されています。
年金収入だけで見た場合、65歳未満では年間164万円未満、65歳以上では年間214万円未満が所得税のかかりにくい目安として紹介されています。
先ほどの例では、60歳受給なら年間152万円です。この場合、所得税はかかりにくい水準に収まる可能性があります。一方、65歳から年間200万円を受け取る場合も、所得税の目安内に収まる可能性があります。
しかし、70歳まで繰り下げると年金は42%増えて年間284万円、75歳まで繰り下げると84%増えて年間368万円になります。額面では大きく増えますが、税金の対象になりやすくなる点には注意が必要です。
住民税非課税世帯に該当するかどうかも重要
さらに重要なのが、住民税非課税世帯に該当するかどうかです。
住民税非課税世帯とは、住民税の均等割と所得割の両方がかからない世帯のことです。単に住民税がかからないだけではなく、医療費や介護費の負担にも影響する場合があります。
たとえば、住民税非課税世帯になると、介護保険料が軽減されたり、高額療養費制度の自己負担上限が下がったり、介護サービス利用時の負担上限が下がったりする可能性があります。
動画では、65歳以上の単身者で年金収入のみの場合、東京23区などの一級地では年金収入155万円以下が住民税非課税の目安として紹介されています。
ここに先ほどの例を当てはめると、60歳繰り上げ受給で年金額が年間152万円になった場合、65歳以降も住民税非課税世帯に該当する可能性があります。一方、65歳から年間200万円を受け取る場合は、この目安を超えるため、該当しにくくなります。
額面では年間48万円の差であっても、住民税非課税世帯に該当するかどうかで、医療や介護の負担まで変わる可能性があります。
だからこそ、年金は額面だけでなく、手取りと生活全体で考える必要があります。
60歳受給の最大のメリットは時間を買えること
60歳から年金を受け取る最大のメリットは、単に早くお金が入ることではありません。元気な時間を買えることです。
60歳で退職した場合、65歳まで収入がないと不安は大きくなります。預金を取り崩す、退職金を使う、NISAを売却する。こうした状態が続くと、精神的な負担も増えます。
しかし、毎月12万7000円の年金が入れば、生活費の一部をカバーできます。月25万円で生活している人なら約半分、月30万円の生活費でも約4割を年金でまかなえる計算です。
これは、生活の安心感に大きく影響します。
また、年金があることで働き方の自由度も高まります。年金がなければ月25万円稼ぐ必要があった人でも、年金があれば月12万円から15万円の収入で生活が回るかもしれません。
週5日働く必要がなくなり、週3日勤務にできるかもしれません。責任の重い仕事を減らしたり、嫌な職場にしがみつかずに済んだりする可能性もあります。
つまり、60歳受給は老後資金を減らすだけの選択ではなく、60代前半の働き方や暮らし方の自由度を買う選択でもあるのです。
60歳受給には5つの落とし穴がある
ただし、60歳受給には注意点もあります。動画では、特に5つの落とし穴が紹介されています。
1度繰り上げると原則取り消せない
年金の繰り上げ受給は、一度選ぶと原則として取り消せません。
60歳で繰り上げ受給を選んだ場合、減額された年金額が一生続きます。後から「やはり65歳受給に戻したい」と思っても、基本的には戻せない点に注意が必要です。
長生きした場合は不利になりやすい
60歳受給と65歳受給の損益分岐点は、額面ベースで約81歳です。
81歳を超えて長生きする場合、65歳受給の方が累計額では有利になりやすくなります。さらに90歳、95歳、100歳と長生きするほど、繰り下げ受給との差は大きくなります。
60歳受給は、長生きリスクには弱い選択肢です。
障害年金との関係に注意が必要
老齢基礎年金を繰り上げ受給すると、その後に障害状態になった場合、障害基礎年金を請求できないケースがあります。
持病がある人や健康面に不安がある人は、安易に繰り上げ受給を決めない方がよいでしょう。必要であれば、年金事務所などで確認してから判断することが大切です。
失業手当との順番に注意する
60歳前後で退職する人は、失業手当との関係にも注意が必要です。
失業手当は非課税ですが、65歳前に老齢厚生年金を受けながら失業手当を受けると、老齢厚生年金が支給停止になる場合があります。
退職後は、先に失業手当を受け取ってから年金を受け取る方が、無駄が少ない場合もあります。退職時には、年金と雇用保険の順番を必ず確認しておきたいところです。
働きながら受け取る場合は在職老齢年金を確認する
働きながら年金を受け取る場合、在職老齢年金の仕組みによって、収入が多い人は年金の一部が支給停止になることがあります。
動画では、2026年4月から基準額が月51万円から月65万円へ引き上げられていると説明されています。そのため、多くの人にとっては以前ほど気にしなくてよい可能性がありますが、高収入の人は確認が必要です。
60歳受給が合いやすい人
60歳受給が合いやすいのは、まず60代前半から生活費が必要な人です。退職金や預金を大きく取り崩すことに不安がある人にとって、毎月の年金収入は大きな安心材料になります。
また、年金だけで生活する可能性が高い人も、税金や社会保険料の負担が比較的軽くなる可能性があります。
健康に不安がある人、持病がある人、家系的に長生きに強い自信がない人も、早めに受け取る選択を検討する価値があります。
さらに、元気なうちにお金を使いたい人にも60歳受給は向いています。60代の旅行、趣味、家族との時間などに価値を置くなら、早く受け取る意味は大きくなります。
退職金やNISAをなるべく崩したくない人にとっても、年金収入があることで資産売却を遅らせることができます。相場が悪い時期に無理に売らずに済む点もメリットです。
60歳受給を慎重に考えるべき人
一方で、60歳受給を慎重に考えた方がよい人もいます。
65歳以降も高い給与収入や事業収入がある人は、税金や社会保険料の負担が増える可能性があります。
また、70歳まで年金なしで生活できるだけの資産がある人は、繰り下げ受給によって年金額を増やす選択肢も検討できます。
90歳、95歳、100歳までの長生きリスクに備えたい人も、60歳受給は慎重に考える必要があります。
さらに、早く受け取った年金を計画なく使い切ってしまう人も注意が必要です。60歳受給は、早く受け取ること自体が目的ではありません。受け取ったお金をどう使うかが重要です。
持病などにより障害年金の可能性を慎重に見たい人も、年金事務所などで確認してから判断した方がよいでしょう。
まとめ
年金は65歳から受け取るのが普通で、60歳から受け取ると損だと考えられがちです。しかし、動画で解説されているように、60歳受給は一概に損とは言い切れません。
単純な額面ベースでは、60歳受給と65歳受給の損益分岐点はおおむね81歳前後です。しかし、その頃には健康寿命を過ぎている可能性があります。
また、年金は額面だけでなく、所得税、住民税、社会保険料、医療費、介護費まで含めて手取りで見る必要があります。特に住民税非課税世帯に該当するかどうかは、老後の負担に大きく影響する可能性があります。
60歳受給の本質は、60代前半の自由度を高めることです。生活費の一部を年金でまかない、退職金やNISAの取り崩しを抑え、働き方を柔軟にする。こうした選択肢を持てることは、大きなメリットです。
ただし、一度繰り上げると原則取り消せないこと、長生きした場合は不利になりやすいこと、障害年金や失業手当との関係に注意が必要なことも忘れてはいけません。
大切なのは、「65歳が普通だから」「60歳は損だから」と思い込むのではなく、自分の年金額、資産、健康状態、働き方、家族構成を踏まえて設計することです。
老後不安の正体は、金額不足ではなく設計不足であることも少なくありません。年金ネットなどを使い、60歳、65歳、70歳で受け取った場合の金額を確認し、自分にとって最も納得できる受け取り方を考えることが重要です。
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